僅か2日の滞在だったモスクワを後にして、私はワルシャワ行きの夜行列車に乗っていた。
ソ連邦崩壊に続く経済混乱の最中、巨大な街に華やかさはまったくなかった。人々は外人に無関心で、とりわけ東洋人には侮蔑の視線も感じる。 もう一度、来て見たいという感情はまったくなく、赤の広場を歩けば充分と言ったところだろうか。
好印象は特に見出せなかったし、それは、列車内での出国検査で決定的となった。
ロシアからベラルーシに入る際、形式的にではあるが、出国手続きがあって審査官が乗客のパスポートにスタンプを押して回っていた。
私の場合、ポーランドの観光ビザがあるので、ベラルーシ国内は通過できることになっていた。四人コンパートメントの乗客から1人ずつパスポートの提示を求めて、スタンプを押していくわけだが、私の順番の際、パスポートと別紙のロシア通過ビザを提示すると、しげしげとA6大の通過ビザを読み始めた。
「1日オーバーステイしている」審査官は、深刻な表情をしながら、ロシア語訛りの強い英語でそう告げてきた。
間髪入れず、彼は「10ドル」と言って、右手を差し出した。
もちろん、オーバーステイではない。
第一、罰金のようなものを徴収するのに外貨である米ドルを指定することなどあり得ない話である。 私は、声を少し荒げて抵抗すると、何も言わずにスタンプを押して立ち去って言った。
あわよくば、10ドルを巻き上げようという魂胆なのだろう。官憲からして、この程度のレベルだったのである。
私はあまり居心地のよくないロシアから去った。
(以下、東欧編に続く 掲載時期未定)
ソ連邦崩壊に続く経済混乱の最中、巨大な街に華やかさはまったくなかった。人々は外人に無関心で、とりわけ東洋人には侮蔑の視線も感じる。 もう一度、来て見たいという感情はまったくなく、赤の広場を歩けば充分と言ったところだろうか。
好印象は特に見出せなかったし、それは、列車内での出国検査で決定的となった。
ロシアからベラルーシに入る際、形式的にではあるが、出国手続きがあって審査官が乗客のパスポートにスタンプを押して回っていた。
私の場合、ポーランドの観光ビザがあるので、ベラルーシ国内は通過できることになっていた。四人コンパートメントの乗客から1人ずつパスポートの提示を求めて、スタンプを押していくわけだが、私の順番の際、パスポートと別紙のロシア通過ビザを提示すると、しげしげとA6大の通過ビザを読み始めた。
「1日オーバーステイしている」審査官は、深刻な表情をしながら、ロシア語訛りの強い英語でそう告げてきた。
間髪入れず、彼は「10ドル」と言って、右手を差し出した。
もちろん、オーバーステイではない。
第一、罰金のようなものを徴収するのに外貨である米ドルを指定することなどあり得ない話である。 私は、声を少し荒げて抵抗すると、何も言わずにスタンプを押して立ち去って言った。
あわよくば、10ドルを巻き上げようという魂胆なのだろう。官憲からして、この程度のレベルだったのである。
私はあまり居心地のよくないロシアから去った。
(以下、東欧編に続く 掲載時期未定)
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